この記事では、コート紙、マット紙、上質紙など、主に印刷で使用される用紙の種類や用途について解説します。
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紙質は原材料と塗工で決められる
「紙」は大きく分けて「和紙(麻、楮などの植物を原材料とした日本古来の紙)」「洋紙(木材パルプから製造された紙)」「板紙(積層構造の厚紙)」の三種類あり、印刷適性の高い「洋紙」が一般的な印刷用紙として使われています。印刷用紙は表面のコーティング(塗工)の有無により「非塗工紙」と「塗工紙」の二種類に分けられます。
印刷用紙は木材パルプを原材料とし「化学パルプ(化学反応で木材チップを分解しリグニンなどを分離して製造されたパルプ)」と「機械パルプ(物理的な力で木材を破砕することで製造されたパルプ)」の二種類のパルプの配合比率と白色度により非塗工紙のグレード(経済産業省の基準)が決められており「上級印刷紙(化学パルプ100%、白色度75%程度以上)」「中級印刷紙(化学パルプ40~90%程度、白色度75%程度以下)」「下級印刷紙(化学パルプ40%未満、白色度55%程度前後)」に分類されます。機械パルプは化学パルプに比べて安価ですが、機械パルプが配合された用紙は白色度が低くなり、繊維に大量のリグニンを含むため長期間保存で褐色に変色します。
非塗工紙を原紙として塗工することにより印刷適性、白色度、平滑度、光沢度が高められ、塗工量と原紙のグレードにより「アート紙」「コート紙」「軽量コート紙」「微塗工紙」などに分類されます。塗工の種類は「グロス」「マット」「ダル」の三種類ありそれぞれ光沢の特性が異なります。
その他、古紙パルプを使用した用紙や非塗工紙でも表面の平滑度や光沢度を高める特殊な仕上げを施した用紙もあります。
これら原材料と塗工の組み合わせにより様々な紙質が作られます。
用紙の種類と用途
上質紙 | コート紙 | マット紙 | |
---|---|---|---|
塗工 | なし | あり | あり |
光沢 | なし | 高光沢 | 低光沢 |
白色度 | 普通 | 高い | 高い |
色再現性 | 低い | 高い | 高い |
手触り | さらさら | つるつる | さらさら |
印象 | 自然 | 鮮やか | 上品 |
可読性 | 高い | 低い | 普通 |
筆記性 | 高い | 低い | 低い |
適性 | 文字印刷 モノクロ印刷 |
写真印刷 カラー印刷 |
写真印刷 文字印刷 カラー印刷 |
文字が読みやすく筆記性に優れた非塗工紙
塗工紙に比べて自然な風合いで、平滑度や光沢度が低くテカらないため、文字が読みやすく筆記性に優れていますが、インキを吸収しやすいので色が沈みます。
上質紙
上級印刷紙の印刷用紙A(化学パルプ100%、白色度75%程度以上)を指します。代表的な印刷用紙のひとつで汎用性が高く保存性に優れます。主に書籍、教科書、ポスター、商業印刷、一般印刷などの用途で使用され、塗工紙の原紙としても使用されます。
中質紙
中級印刷紙の印刷用紙B(化学パルプ70%以上、白色度75%程度以下)、印刷用紙C(化学パルプ40%~70%、白色度65%程度以下)、グラビア用紙(15~30%程度の塡料を配合した中質紙にスーパーカレンダ仕上げを施した非塗工紙)を指します。主に書籍、教科書、雑誌の本文、商業印刷、一般印刷などの用途で使用され、塗工紙の原紙としても使用されます。機械パルプが混合されているため変色しやすいです。
更紙(ざらがみ)
下級印刷紙の印刷用紙D(化学パルプ40%未満、白色度55%程度前後)の俗称です。主に雑誌の本文で使用されます。機械パルプが混合されているため変色しやすいです。古紙100%のものは「特殊更紙」と呼ばれ、主に漫画誌の本文などで使用されます。
その他の非塗工紙
セミ上質紙
化学パルプ90%以上、白色度75%前後の中級印刷紙は「セミ上質紙」と呼ばれます。主に書籍、教科書、雑誌の本文、商業印刷、一般印刷などの用途で使用されます。
クリーム書籍用紙
可読性を高めたクリーム色の上級印刷紙です。主に新書や文庫の本文で使用されます。
色上質紙
様々な色で染色した印刷用紙です。主に冊子の表紙、書籍の見返し、封筒などでよく使用されます。
インディアペーパー
極薄で不透明度の高い薄葉(うすよう)印刷紙となります。主に辞書、六法全書、聖書などの用途で使用されます。
平滑性が高く色を鮮やかに再現できる塗工紙
上質紙や中質紙をベースに白色顔料で表面をコーティングし印刷適性を高めた用紙です。非塗工紙に比べて平滑度、光沢度が高く、色を鮮やかに再現できます。その平滑性により筆記具での書き込みには不向きです。
グロス | 最も光沢度が高いコートで、色の鮮やかさも高いです。いわゆる「コート紙」と呼ばれるものは「グロス調のコート紙または軽量コート紙」を指します。 |
---|---|
マット | 艶消し加工を施した光沢度の低いコートで、色の鮮やかさはやや落ちますが、文字が見やすくなります。いわゆる「マット紙」と呼ばれるものは「マット調のコート紙または軽量コート紙」を指します。 |
ダル | インクが乗った部分は光沢があり、白紙部分は艶消しになるコートです。 |
コート紙
1m²当たり両面で40g程度以下の塗料をコーティングした用紙です。原紙が上質紙の場合はグレードA2、中質紙の場合はグレードB2と呼ばれます。塗工紙としては最もポピュラーな印刷用紙です。主に美術書、雑誌の表紙や本文、カラーページ、チラシ、口絵、ポスター、カタログ、カレンダー、パンフレット、ラベルなどの用途で使用されます。
軽量コート紙
1m²当たり両面で30g程度以下の塗料をコーティングしたやや薄手の用紙です。原紙が上質紙の場合はグレードA3、中質紙の場合はグレードB3と呼ばれます。主に雑誌の本文、カラーページ、チラシなどの用途で使用されます。
アート紙
1m²当たり両面で50g前後の塗料をコーティングした用紙で、コート紙よりもさらに平滑度、光沢度が高い高級印刷用紙です。通常のアート紙はグレードA1と呼ばれ、それよりもさらに平滑度と光沢度を高めたものはスーパーアート紙(グレードA0)と呼ばれます。片面のみコートを施した片面アート紙も存在します。主に美術書、雑誌の表紙、口絵、ポスター、カタログ、カレンダー、パンフレット、ラベルなどの用途で使用されます。
微塗工紙
1m²当たり両面で20g程度以下の塗料をコーティングし、原紙に中質紙を使用した薄紙です。主に雑誌の本文、チラシ、カタログなどの商業印刷で使用されます。
その他の塗工紙
キャストコート紙
キャストコーターという機械で圧縮し平滑度を高めた、アート紙以上の強光沢を持つ高級印刷用紙です。主に美術書、雑誌の表紙などの用途で使用されます。
アートポスト紙
厚手のアート紙です。艶消しのものはマットポスト紙と呼ばれます。主に絵はがき、名刺、カードなどの用途で使用されます。
その他の用紙
新聞巻取紙
安価な機械パルプを主原料とし、高速輪転機による大量印刷に耐える高いインク吸収性と強度を備えた新聞印刷専用の用紙です。
嵩高紙(かさだかし)
紙の繊維の間に空気を入れて密度を下げることで厚みを維持しつつ軽量化した用紙で、主に書籍で使用されることが多いです。
ケント紙
なめらかな表面を持ち適度な厚みと弾力を持つ筆記性に優れた化学パルプ100%の非塗工紙です。主に画材として使用されますが、名刺や封筒にも用いられます。
クラフト紙
一般的にはパルプを漂白せずに製造した茶褐色の用紙のことを指します。特に強度が優れているため、主に重包装、段ボール、封筒、粘着テープなどで使用されます。
純白ロール紙
漂白したパルプを使用し片面だけ平滑に仕上げた白色のクラフト紙です。主に包装紙などで使用されます。
ユポ紙(合成紙)
ユポ・コーポレーションの商標製品でポリプロピレンを主原料とする合成紙です。風合いが木材パルプ原料の印刷用紙に似ており、耐水性、耐久性に優れているため、屋外に掲示するポスターなどに利用されています。
PPC用紙
一般的にはコピー用紙や普通紙と呼ばれるオフィス/ホームユースのレーザープリンタやインクジェットプリンタで使用する非塗工紙です。それぞれのプリンタに最適化された専用のコート紙も存在します。
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まとめ
今回は、コート紙、マット紙、上質紙など、主に印刷で使用される用紙の種類や用途について解説しました。原材料と塗工の組み合わせにより多種多様な用紙が存在しますので、予算や用途に応じて適切な用紙を選ぶことが重要です。
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