オフセット印刷とオンデマンド印刷の違いとは？各特徴や選び方を解説

オフセット印刷とは？

オフセットは英語で「相殺する」という意味です。

いったい何を相殺するのか。

残念ながら、オフセット印刷のオフセットは「相殺する」という意味ではありません。

版についたインキを、ブランケットと呼ばれる樹脂やゴム製の転写ローラーにいったん移し（Off）、そのブランケットを介して印刷用紙に転写（Set）するといった、版と用紙が直接触れない印刷方式から、「オフセット」という名がつきました。

オフセット印刷のメリット・デメリットは？

オフセット印刷におけるメリット

色の再現性が高く高品質な印刷物が生産できる
オフセット印刷は、インクをゴムローラーに転写してから紙に印刷する方法です。細かな網点※1により、色の再現性が高く、濃淡についても細部まで表現することができます。ほかの印刷手法と比較しても、印刷物を安定した品質（高品質）で生産することができるため、商業印刷領域で広く利用され、現在では主流の印刷手法となっています。
※1 網点とは、印刷物の濃淡を表現するための網状の点のことです。印刷用データをドット（点）に変換するスクリーニング作業によって変換し、版上に再現します。
大量印刷に適しており、コストを抑えることができる。
オフセット印刷は大量印刷に適しています。版を必要とする印刷方法ではありますが、印刷内容に変更がなければ同じ版で短時間に印刷物を大量生産することができます。また、一度に大量生産することで印刷物1部あたりのコストを抑えることができます。
多様な印刷物に対応できる
オフセット印刷は、多様な印刷物に対応できます。そのため、冊子、パンフレット、広告チラシ、ポスター、名刺、封筒、カレンダーなど、さまざまな印刷物に使用できます。

オフセット印刷におけるデメリット

少部数の場合はコストが高くなる場合がある
オフセット印刷は印刷する前に版を作成する必要があるため、少部数の場合はかえって版の費用や印刷、加工に必要な用紙の予備が多く必要となるため、コストが高くなる場合があります。
少部数の場合はオンデマンド印刷と比較して印刷に時間がかかる
オフセット印刷は大量生産に向いていますが、印刷には版が必要になるため、少部数の印刷物では仕様によってかえって時間がかかる場合があります。

オンデマンド印刷とは？

さて、続いてはオンデマンド印刷について。

オンデマンドと聞くと、ビデオオンデマンドとかオンデマンド放送とか思い浮かべますが、「要求に応じて」という意味です。

なので、ビデオオンデマンドはユーザーの要求に応じてビデオ配信をすることです。

オンデマンド印刷もそれと同様で、ユーザーの要求に応じて印刷するといった意味合いです。

POD(Print On Demand)とも呼ばれます。

本来印刷をする際は、オフセット印刷のように版を作る必要があるのですが、オンデマンド印刷はデータをそのまま印刷します。

そのため、オフセット印刷よりも工程が少なくスピーディーで、1枚から手軽に印刷でき、まさに「ユーザーの要求に応じて」印刷ができるのです。

イメージとしては家庭用プリンタの超高性能版。

では家庭用プリンタと何が違うのか？

家庭用は基本インクを使用して印刷する、インクジェットプリンターと呼ばれるタイプですが、オンデマンド機はトナーと呼ばれる粉を使って印刷する、レーザープリンターと呼ばれるタイプです。
※一部ではオンデマンド印刷で業務用のインクジェットプリンターを使用している場合もあります。

家庭用のインクジェットプリンターは、インクカートリッジのセットされたヘッドと呼ばれる部分が左右に移動しながら用紙にインクを吹き付けて印刷します。

レーザープリンターは、帯電ローラーで感光体ドラムに磁気を持たせ、印刷箇所にレーザーを当て電圧を弱めます。

するとそこにトナーが付着します。

定着ローラーに帯電ローラーで持たせた磁気と反対の磁気を発生させ、トナーを紙に吸着させます。

そして、ヒーターローラーでアイロンのように焼き付けます。

最近では家庭用のレーザープリンターもありますが、もちろん印刷会社で使用しているものはそれらよりも高性能、高品質です。

オンデマンド印刷のメリット・デメリットは？

オンデマンド印刷におけるメリット

少部数の印刷に適している
オンデマンド印刷は、少部数印刷に適している印刷方法です。オフセット印刷と違い版を必要としないため、1部から印刷可能です。また、少部数であればオフセット印刷と比較してコストを抑えることができます。
短い納期で印刷できる
オンデマンド印刷は、版を作る必要がないため少部数であれば、オフセット印刷と比較して納期が短くなります。
バリアブル印刷に対応できる
オンデマンド印刷は、印刷情報が変化する印刷に適しています。例えばハガキの宛名面印刷やナンバリングが必要な印刷物を印刷するのに適しています。

オンデマンド印刷におけるデメリット

印刷品質が低い場合がある
オンデマンド印刷は、オフセット印刷に比べて印刷品質が低い場合があります。これは、オンデマンド印刷は、インクジェットプリンターやレーザープリンターを使用するためです。ただし、近年は高精細印刷が可能なオンデマンド印刷機が開発され、オフセット印刷に近い印刷品質を実現しています。
大部数印刷の場合はコストが高い
オンデマンド印刷は、少部数印刷に適しているため大部数印刷の場合はコストが高くなります。部数や印刷仕様納期などでコストがかわるので注意が必要です。
対応できる印刷物が限られている
オンデマンド印刷は、対応できる印刷物が限られています。これは、オンデマンド印刷は、インクジェットプリンターやレーザープリンターを使用するためです。オフセット印刷は、版を使用するため、より厚い紙や特殊な紙に印刷することができます。

オフセット印刷とオンデマンド印刷の違い

オフセット印刷とオンデマンド印刷の大きな違いは、版の有無です。オフセット印刷は版を使って印刷しますが、オンデマンド印刷は版を使いません。

オフセット印刷は、版を作るのに時間と手間がかかりますが、大量印刷に適しています。また、オフセット印刷は、印刷品質が高く、多様な印刷物に使用できます。

オンデマンド印刷は、版を使わずに印刷するため、版を作る必要がなく、小ロット印刷に適しています。また、オンデマンド印刷は、印刷に時間が短く、コストが安い場合があります。しかし、オンデマンド印刷は、印刷品質がオフセット印刷に劣る場合もあります。

オフセット印刷とオンデマンド印刷は、それぞれにメリットとデメリットがあります。そのため、印刷物の内容や枚数、コストなど、印刷する条件によって、どちらの印刷方法が適しているかを検討する必要があります。

オフセット印刷とオンデマンド印刷の選び方

項目	オフセット印刷	オンデマンド印刷
版	使用する	使用しない
印刷部数	数百～万部	数部～数百部
印刷時間	大部数の場合、短い	少部数の場合、短い
印刷コスト	大部数の場合、安い	小部数の場合、安い
印刷品質	高い	低い場合がある
対応できる印刷物	多様	限定